今回の記事では日本ではマニアックですがPSAグループが開発し、プジョー・シトロエンなどの一部並行輸入車のみ搭載されているDPF再生システムについて解説します。機能としては非常に理にかなった便利なシステムです。
DPF再生システムとは?
DPF再生システムとは、一部の車種(プジョー、シトロエンetc.)に搭載されている、DPFの再生を補助するシステムです。仕組みとしては尿素SCRシステムと似ており、DPFに燃料媒介触媒(Eolys)を噴射することで、ススの燃焼温度を450℃まで低下させることでDPFの再生を安定させるシステムです。都市部など排気ガス温度が上がりにくい環境下で特に効果を発揮します。
燃料添加剤触媒(Eolys)とは?
DPF再生システムは燃料添加触媒(以下Eolysと表記)というフルードをDPFに少量噴射しています。Eolysには触媒金属の微粒子が含まれており、DPFにEolysが運ばれることで、DPFの再生温度を低下させます。メカニズムとしてはJLMのDPFクリーナーを燃料に入れたときと同じ効果を担っています。
DPF再生システム搭載車種
一般的に下記のモデルに搭載されています。(日本で流通が確認されている車種)
プジョー:3008、208、508など
シトロエン:C4、C4ピカソ、C5、ベルランゴなど
ミニ:2代目クーパーD
DPF再生システムのメンテナンス方法
日本での搭載車種が極端に少ないこのシステムのメンテナンス方法について解説いたします。
1.Eolys 補充タイミング
Eolysは、1タンクあたりおおよそ80,000km~100.000km分を賄うことが可能です。最近の車両はEolys警告灯を搭載していますが、補充には手間がかかるため、車検毎にEolysを補充することをおすすめしています。
2.Eolysの補充
Eolysの補充は、エンジンオイル交換やAdblueの補充より工数が必要です。補充には専用の補充キットとリフト設備が必須となります。また、Eolys補充後は必ず診断機を用いてDPF再生システムのリセットを行う必要があります。リセットを行うことで、ECUは正しい残量把握と制御を行うことができます。
3.DPF再生システム搭載車の注意点
―DPFのスス詰まり:DPF再生システムによって通常よりは詰まりにくい構造ではありますが、警告灯を放置する、常時短距離走行などを行うとDPFの再生が出来ず詰まりが発生してしまいます。
―Eolysタンク・ポーチの破損・故障:内部のセンサーエラーやタンク自体の破損により、システムが正常作動しない、Eolysが補充できないといった事例があります。Eolys補充前にはシステムが正常に作動しているか、確認が必要です。
―ECUリセットが出来ない:診断機がない状況でEolysのみ補充しても、システムは正常に作動できません。お手持ちの診断機でDPF再生システムのリセットが出来ることを確認してから、補充を行ってください。
実際の補充方法は下記youtubeの動画をご参照ください。
(英語のため、字幕オン→設定から自動翻訳(日本語)機能をご使用ください。)
整備士へのアドバイス
1.信頼できるEolysを使用する:このシステム自体がメーカー独自開発品であるため、明確な国際規格が存在しません。現状メーカー指示に基づくと4世代の製品が存在します。純正のEolysは世代間の互換性がなく、指定のフルードを入れなければDPFに不具合が発生すると記載されています。また、妙に安価な製品は単なる液体といったケースも散見され、金属触媒が全く含まれていない事例もあります。
JLMでは各世代のDPF再生システムに対応可能な高性能なEolysを販売しています。価格は高いですが、各世代のDPF再生システムに対応し、安心してご使用いただけます。
2.DPFが再生しやすい環境を作る: 車両のDPF再生の頻度が上がった場合、高速道路など長時間巡行できる道路で運転するか、診断装置を使用して手動でDPFを強制再生することを検討してください。これは、特に車両が通常の再生が行われなかった短距離走行に使用されていた場合に、余分な煤を燃やしてフィルターの効率を回復するのに役立ちます。理想を言うとDPFの再生にはJLMのDPFクリーナーも一緒に使うとより強力にDPFを再生できます。
3.オーナーへの啓蒙活動:残念ながら現在のクリーンディーゼルは短距離走行、長時間のアイドリングによりDPFに不具合を起こす可能性があると言わざるを得ません。DPFの故障を抑えるには時々長距離運転が必要であることを車両オーナー啓蒙することも重要な故障予防になります。